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SPUR特別編集
お料理コーディネイト帳
オリョウリコーディネイトチョウ

著者:長尾 智子
■ISBNコード: 978-4-08-333086-5
■判型/総ページ数: B5判変型ソフト/104ページ
■発売年月日: 2007年10月23日
私の小さな料理手帖

 いま私の手の中には、一冊の小さな手帖があります。それはこの約7年のあいだ、ひと月に一回つけてきた日記のようなもの。お茶やお茶に合う食べ物、場所を求めてあちこちに出かけていったり、一年中、サラダだけを作り続けたり、お菓子ばっかり並べてみたり、材料の組み合わせを考え続けたり。あるとき、それはまるで研究のようだね、と言われたので、やがて研究所と称して、素材がどう姿を変えるかを試したり、と、料理にまつわるいろいろなことを考えながらの7年でした。場所はSPURという雑誌の中にずっとあり、少しずつ様子を変えながら毎月ひとつかふたつの食べ物を作ってきたのですが、のんびりと書き続けたその日記を、毎日のごはんに置きかえて、一冊の手帖にしてみようと思い立ちました。
 料理は味が一番大事。いい塩加減が味の基本で、あとは何でしょう? 盛りつけも大事。色合いも、食べるタイミングも、温度もみんな大事です。それをひと言で言い表すのは難しいけれど、私がいつも気にしていることで言うと、「コーディネイト]が一番ふさわしい言葉のように思います。それではまるで服と同じ? そうそう、服と同じだなあと思います。たったひとつの特徴を除いては。

 にんじんのオレンジ色にこんがりした焼き色、そこに添えたレモンの黄色、白っぽいグラデーションだけでまとめた野菜の一品。いろんな形と色の野菜を集めたサラダ。料理のコーディネイトはそこまでは服と一緒。素材感、作り手の感覚が反映されるところも同じ。でもそれだけではありません。料理には、味のコーディネイトという面白さも加わるのです。味は、直接目には見えないもの。そこが面白く、それこそが料理の醍醐味かな? といつも思います。
 塩は味つけの基本だけれど、どんな塩を使って、それにどの種類のこしょうをふるかで違ってくることも意外と多い。料理は毎日のことなので、そんなにマニアックになることもないのですが、粗挽き黒こしょうと、細かい白こしょうの違いに気づくと、自分で作る料理はもっと深まって面白くなります。黒こしょうは味や見た目のアクセントにはなるけど、ここはやさしい感じにしたいから、白いポタージュには白いこしょうにしておく、というのもあり。これに少しだけカレー粉を足すとどうなる? とか、煮込みをさっぱりした感じに作りたいからトマトを増やそうかな、とか、そんなふうに料理は展開していきます。

 たとえばトマトを切ってお皿に並べる程度の簡単なサラダでも、何かハーブの香りはつけるの? トマトは熟している? 冷たいの? オリーブ油をかけるの? どんなオリーブ油を? ビネガーはかける? やめておく? それともレモンをしぽる? などなど、どんな味にするのかをちょっと立ち止まって考えるとわかります。そして料理も「コーディネイト」なんだな、と深く納得するはず。それはとっても面白いコーディネイトなんですよ。
 ときにはじっくり取り組むのもいいし、ゆっくりしていられない日のシンプルな料理でも、好きな味の塩や酢、オイルやスパイスの力を借りれば、自分で作る普段の料理はいくらでもおいしくなります。と言っても、珍しいものではなく、味のいい自然塩を選ぶとか、こしょうはペッパーミルで挽いて使うとか、ささやかなことだけでいい。軽く味つけしたサラダをきれいな形のお皿にちょこんと盛りつけて、最後にまるで秘密のスパイスをふりかけるようにこしょうを挽いて、ひとさじのオイルを落とし、そして少しもったいぶって出せばスペシャルな一皿にも見えてくるし、正反対に、大皿に思いきり山盛りにするという手もあります。おいしかった、と思える料理になるかどうかは、すべてコーディネイト次第。この小さな手帖で、コーディネイトのヒントを手に入れてください。 (…この続きは本書にてどうぞ)

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