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しっかり育つよ! ベランダ・永田農法
シッカリソダツヨ ベランダ ナガタノウホウ

著者:たなか やすこ
■ISBNコード: 978-4-08-650132-3
■判型/総ページ数: 文庫判セミハード/192ページ(カラー132ページ)
■発売年月日: 2007年6月20日
はじめに

 永田農法という言葉を知ったのは、「ユニクロのトマト」が話題になったとき。アパレルメーカーがトマトを売るのは画期的なことと思いつつも、 「あれ? でも永田農法って有機農法じゃないんだ〜」と。近所に菜園を借りて収穫し続けてきた有機栽培のトマトの味に満足していたので、 それ以上永田農法に踏み込むこともなく日々は過ぎたのでした。
 そして2005年2月、私は再び永田農法と出会います。
 NHKから1年の予定で『月刊やさい通信』の出演依頼があったのです。番組は三部構成で、糸井重里さんが全国の野菜畑を訪ね、イラスト レーターのこぐれひでこさんが、実際に永田農法で野菜作りをして「おいしい菜園日記」を描く。そして、永出農法でベランダ菜園にトライする のが私の役割でした。プロデューサーの諏訪さんに「永田農法で作ると、こんな玉ねぎができあがるんですよ」と見せていただいたビデオには 本当に驚きました。前年放送の『糸井重里のおいしい野菜つくっちゃいました』に出てきた子どもたちは、赤玉ねぎを生のまま丸かじりして口々に 「甘〜い!」などと言っています! さらにトマトやトウモコロシの育て方を見ると、ごろごろと石の混じった土を使い、土がからからになるまで極力 水を控え、液肥を使う。おまけに苗の根を切ってしまうのです。もうこれまでの考え方とまるで違う栽培方法で「大丈夫なの〜? できるの〜???」 という感じ。とにかく衝撃的でした。
 自分の目で確かめなければと、さっそく永田照喜治先生に会いに行きました。そして……。
 さて、私なりのベランダ・永田農法。意外にもこの農法はベランダ栽培にぴったりだったのです。そして収穫した野菜はびっくりするほどの おいしさ! それは菜園家にとって、何よりの喜びでした。

私の永田農法

永田先生との幸せな出会い

 永田農法の野菜はごろごろ石の中で育つという先入観があったのですが、先生の自宅前の畑にはレタスや春菊が優しげに並んでいました。 「まずは食べてみてください」とラディッシュを抜いてくださいました。根からバラバラと土がこぼれ落ちて、うちの畑のしっとりからみつく土とは 明らかに違う印象。驚いたことにハート形の双葉がしっかりとついています。双葉は生長につれて黄色くなって消えてしまうのが普通なのに。 ひと口かじると水分が弾けて、断面を見るとむしろのびのびと本来あるべき姿に育ったというサインを感じるのです。
 先生は、野菜のルーツを辿りながら栽培方法を考えていったそうです。出発点は約1万本のみかんの木。故郷の天草で家業の農業をスタート したころ、肥沃な土地で作るみかんより、石ころだらけの斜面に取り残されたような木で育ったみかんのほうが味が濃くておいしいと気づいた そうです。 “野菜は生まれ故郷に近い環境で育てると、本来備わっている生命力や味がよみがえる”。そうか……とこのとき改めて思った フレーズでした。
 私の経験からすると、肥えた土でなくても植物は育つけれど、葉や実が筋張って味は今ひとつのことが多かったのです。どうやらその違いは、 根の育て方にあるようです。石や岩があって根がそれ以上深く伸びることができない状態でも、元気のある植物は根を横に広げて岩肌に しがみつくようにして、地表の土を巻き込みながら生長します。このことで、根は地表に近くなり、水も酸素も養分も摂りやすい状態に。さらに 必要最低限の水で育てることにより、根や葉からも水分を吸収するべく活性化し、野菜や果物は本来の味や姿に戻っていくのですね。

プチ有機栽培から永田農法ヘ

 有機肥料で育てることにこだわってきたのは、それがいちばん植物にとって自然な状態だと思ったからでした。その植物本来の形で育てて あげたいと思っていました。けれど、有機肥料は微生物が分解してくれないと植物が吸収することができません。中途半端に有機栽培をして、 土の中に微生物が少ない状態だと、土がどんどん硬くなってしまいます。また未完熟な有機肥料は、分解するときにメタンガスを発生して、根を 傷めてしまうということも今回知りました。
 永田農法では、液体の肥料を使います。液肥に含まれているのは、チッ素(N)リン酸(P)カリウム(K)の植物三大栄養素のみ。これ以上分解 できない単位です。そして植物の根はじつはこの元素単位でしか吸収することができません。つまり、有機肥料でも化学肥料でも、植物が養分 として吸収するときは元素そのものなのです。化学肥料というと、植物に対して不自然な栄養素のような印象がありますが、よく考えてみると、 そうともいえないのです。
 永田農法における肥料の考え方は、栄養を与えたいタイミングを逃すことなく与え、必要ないときはいつまでも土の中に留まらせないということ。 乾いた状態の土にきゅっと効かせる感じで使うから、速効性があって土に留まらない液肥がもっとも向いているということなのです。
 そしてもうひとつ、これまでとまったく違うのが土です。永田農法では日向土という土を使います。これは宮崎県産の軽石で、火山岩を細かく 砕いて高温で成形したもの。一般的には山野草やオモト、サボテンなどの用土として売られています。じつは、この土を野菜用に使うなどという ことはこれまで考えたこともありませんでした。
 日向上の特徴は、「多孔質で通気性、排水性、保水性に優れる」。つまり土の粒の中に小さな穴がたくさんあいた団粒構造になっていると いうわけ。本来、土と土の間に小さな隙間がたくさんあってそこに空気や養分が保たれている土が理想的といわれています。日向土は土の ひと粒ひと粒が植物が好む構造を持っているというわけです。 (…この続きは本書にてどうぞ)

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