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家庭教師ヒットマンREBORN!
隠し弾1 骸・幻想
カテイキョウシヒットマンリボーン

著者:天野 明
著者:子安 秀明
■ISBNコード: 978-4-08-703177-5
■判型/総ページ数: 新書コミックス判ソフト/232ページ+口絵4ページ
■発売年月日: 2007年3月12日
   跳ね馬爆走!


 人里から遠く離れた峻険たる山の奥。
 太陽はすでに落ち、月や星の光もとどかない深い闇の広がる森で、いま人の形をした二匹の 《獣》たちが牙を交えていた。

 しぱぁぁぁんッ!

 闇を切り裂いてあらわれた鞭が、黒髪の少年の武器であるトンファーにからみつく。
「……………」
 スッと全身の力をぬく少年。
 そこに一瞬のためらいもなかった。
「……っ」
 闇に包まれ姿は見えないながら、鞭の持ち主の動揺がかすかに伝わってくる。
 すかさず少年は走り出した。
 常人なら歩くことすらできない夜の険しい山道を駆け抜け、一直線に獲物に迫る。

 ガキィィィィィィィィィィッ!

「……く!」
 頭めがけて振り下ろされたトンファーを、鳶色の目の青年はかろうして腕で防いだ。みしりと骨の きしむ感触に顔をしかめつつも、その口もとには楽しむような笑みが浮かぶ。
「っとに容赦なしだな、おまえは」
「してほしかったの?」
「ハン」
 青年の長い足が鞭に負けじとしなり、黒髪の少年の脇腹にたたきこまれる。冷静にもう片方の トンファーでガードする少年。しかし、それは青年にとって計算済みだった。蹴りの反動を利用して 少年から距離を取り、得物の鞭をトンファーから解き放つ。
 だがそこへ息つく間もなく少年が襲いかかる。青年もまた黒い鞭を振るってそれを迎え撃つ。
 互いの得物が互いの肉体を打つも、寸前で急所をはずし決して致命傷は受けない。血と 汗を散らしながら、両者は踊るようにあざやかな動きで互角の死闘を繰り広げていた。
 実力は桔抗。
 しんと静まり返った闇の中、息すら止めてぶつかりあう二人の戦士は――

 ♪ 緑たなびく並盛の〜
  大なく小なく並がいい〜 ♪♪

「……は?」
 不意にひびいたのどかな歌に、青年の肩がカクリと落ちた。
 一方の少年は、落ち着いた表情のまま携帯電話を取り出し通話ボタンを押した。
「もしもし」
「って、おまえの着信かよ……」
 戦いに水をさされてしまい、青年はやれやれといった顔で鞭をおろした。
「ま、いいか。そろそろ修業も切りあげようと思ってたとこだ。ロマーリオ」
 後ろに向かって声をかけると、木陰からスッと黒いスーツの男が現れた。青年より年上に見える 口髭の男は、しかしうやうやしい態度で彼にタオルを差し出した。
「おつかれさん、ボス」
「おう」
 当然というふうにそれを受け取る青年。
 このロマーリオと呼ばれた男、日本から遠く離れたイタリアのマフィア『キャバッローネ・ファミリー』の 一員であった。そして、彼らの尊敬と忠誠を一身に受ける青年こそキャバッローネの若き10代目 ボスなのである。

その名を『跳ね馬』ディーノ。

 強靭たる黒き鞭を得物とし、その若さに似合わぬ武威とカリスマ性をもって裏社会で一目置かれて いる人物である。
 そんなディーノと互角に戦っていた黒髪の少年も当然ただものではなかった。
「おい、恭弥。つーわけで修業はここまでだ。オレは用があって先に行くが、おまえは身体を休めて から――」
 ――ピ。
 携帯を切った少年は無言のままディーノに背を向け歩き出した。
「え……おい、どこ行くんだよ?」
 完全無視。
 少年はあっという間に夜の闇の中に消えていった。
「ったく……」
 やれやれと頭をかくディーノ。
 このときディーノは知らなかった。少年の受けた電話が、彼の通う並盛中学校の風紀委員からのもの であったことを。そして、それが彼の愛する学校で異変が起きているとの報告であったことを。

少年の名は雲雀恭弥。

 並盛中を誰より愛する風紀委員長でありながら、誰より冷酷で戦いを好む最強の不良である。
 並盛中の校舎は、いま裏社会の抗争の舞台となっていた。
 ボンゴレリング争奪戦――
 イタリアでも屈指のマフィア『ボンゴレ・ファミリー』の次期ボスの座をかけて、その継承の証である 七つのリングを奪い合い、二人のボス候補とその部下が毎夜バトルを繰り広げていたのである。
 ボス候補の一人、ツナこと沢田綱吉と親しいディーノは、彼の側について戦う雲雀の『家庭教師」と なり、実戦による修業を続けてきた。心情としては直接ツナに味方して戦いたいところだったが、 ボンゴレとキャバッローネの同盟関係ゆえに表だってボス候補の一方に味方することはできなかった。 ツナの味方である雲雀を鍛えるという側面でのフォローが、彼にできる最大限の助力だったのである。
 ちなみに、雲雀は抗争の舞台が愛する学校であることを知らされていなかった。ディーノは知って いたが、雲雀が修業を無視して乗りこむことを懸念し、秘密にしていたのである。
 その懸念は的中し、部下によって異変を知らされた雲雀は、まっすぐに並盛中へ向かっていた のだが……そのことをディーノが知るのは、彼もまた一足遅れて並盛中に到着したあとのこととなる。
「しかし、最後の最後までかわいげのねぇじゃじゃ馬だったぜ」 (…この続きは本書にてどうぞ)

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