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劇場版 ONE PIECE
エピソード オブ アラバスタ 砂漠の王女と海賊たち
ゲキジョウバン ワンピース

著者:浜崎 達也
原作:尾田 栄一郎
■ISBNコード: 978-4-08-703178-2
■判型/総ページ数: 新書コミックス判ソフト/224ページ+口絵4ページ
■発売年月日: 2007年3月12日
プロローグ


 少女と隼は空を駆ける。
 砂漠の上を。ひらり、翼は気流をつかむ。
「わァ」
 幼い少女は大鷲のようにたくましい隼の背中にしがみつく。
 眼下には王都アルバーナ。
 四千年の歴史あるアラパスタ王国の都だ。高さ数百メートルの円台地の上に、宮殿を正面として、 幾重にも郭を設けた石の街並みが築かれていた。建物の屋根を飾るドームや尖塔は、空から 見下ろせば、パティシエがこしらえたかわいいケーキ飾りのようだ。門は五か所――西、南西、 南、南東、東――それぞれに大階段があり頑強な塔門に守られている。アルバーナは王家の 象徴たる神殿都市だった。
「王女(ビビ)様……このことは絶対、ないしょですよ」
 隼がいった。
「うわァ、高い!」
「あなたを乗せて飛んではいけないと、国王に、きつくいわれてるのですから」
 スカーフを輪で留め、白い民族衣装をまとった隼だ。
「ヤならいいわよ」少女は不服そうに頬をふくらませた。「あなたがしたこと一生許さない。ペルの ほうから、なんでもいうこと聞くっていってきたんじゃない」
 躾でもするようにペシペシと頭を叩かれて、隼は困った顔をした。よほど王女に対して申し訳の 立たないことをやらかしたのだった。
「ねェ、ペル」ビビはふと尋ねた。「あなたは王国でいちばん強いよね」
「護衛隊の責務を果たすため、訓練は欠かしておりません」
 ベルは実直に答えた。
「なぜあなたは、毎日、戦いの訓練をするの?」
「このアラパスタをお守りするためです」
 腰には帯剣。
 隼は王女の天駆ける騎士だった。
「誰と戦うの?」
「さァ」ペルは静かに答えた。「戦うことより、守るのです」
「それ、ちがうの?」
「目的のちがいです」
 ペルの答えがいまひとつ納得できず、幼いビビは「変なの」と首をひねった。
「でも、わたしペルが好き」
「え……」
「あなたの羽はいい匂いがするもの」
 ビビは隼の羽毛に頬をうずめた。
 身を屈めたその視線のさきに、小さく動くものが目にとまった。
「ペル、あそこ」
 眼下――砂漠を行く隊商が見えた。ペルが急降下する。ビビはしがみついた。長く美しい空色の 髪が靡(なび)いた。
「コーザ!」
 ビビは声を投げた。
 気づいた隊商の面々が頭上を仰ぐ。
「ビビ……?」
 ラクダにまたがった少年が、呆気に取られたような声をかえした。
 ふたりは友達。
 コーザは街の悪ガキグループ〈砂砂団〉のリーダーで、ビビは王族でありながら下々の子供とばかり 遊んでいた。だからビビは知っていた。コーザは、でぶっちょのお父さんといっしょに、西の砂漠に 新しい町を築きに行くのだ。

 ――おまえの国王から、おれの親父に話があったんだ。
 先日。〈砂砂団〉の秘密の隠れ家で、コーザはビビにいったのだ。
 ――『ユバ』?
 ――無人のオアシスの名だ。でも、あのあたりには商人が行き交う。そこに町ができてみろ。 どれだけの人がよろこぶか。
 すごいだろう、と。コーザは夢を語った。
 ふたりの眼下にはアルバーナの夜景が広がっていた。街でいちばん高い場所だから。そこは 秘密の場所だ。 (…この続きは本書にてどうぞ)

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