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銀魂 3年Z組銀八先生 2
修学旅行だよ! 全員集合!!
ギンタマ サンネンズィーグミギンパチセンセイ

原作・イラスト:空知 英秋
著者:大崎 知仁
■ISBNコード: 978-4-08-703181-2
■判型/総ページ数: 新書判ソフト/248ページ+袋とじ入カード
■発売年月日: 2007年7月20日
第1講
 修学旅行って行く前からワクワクするよね。え? しない?


 青春は何もかもが実験である。(スティーブンソン)

 ファンレターありがとう。全部読んでます。(坂田銀八)

 いや、ここ目次のコメント欄じゃないんで。(志村新八)

 LHR。
 L、レモンの輪切りしてて、H、人さし指切っちゃって、R、流血! の略である。嘘である。ロングホームルームの略である。進路指導や学校行事に関する話し合いが行われる時間だ。
 銀魂高校3年Z組では、月曜日の六時限目が、その時間だった。
 でもって、今日は月曜日。五時限目はすでに終わり、そのあとの十分間休憩も終わっている。
 今日のLHR、なんの話し合いするんだろ。志村新八は頬杖をつきながら思った。いや、というよりも、だ。ちゃんとした話し合いになんのかな。
 まだ担任の現れていない教室で、新八のクラスメイトイト――親には紹介しづらいクラスメイトたちが、今日もワイワイと騒いでいる。
 荒れなきゃいいけどな、LHR。新八が溜め息をついたとき、ちょうど始業のチャイムが鳴り始めた。ほどなくして、廊下からペッタペッタとアンニュイな足音が近づいてくる。安物のサンダルの音だ。
 教室の引き戸がガラリと開けられ、白髪で天然パーマの男が姿を現す。ずり落ちた眼鏡。くわえ煙草。だらしなく着た白衣。Z組の担任教師、坂田銀八が、騒ぐ生徒らに向けて低い声で言った。
「ぎゃーぎゃーうるせーんだよ、おめーら。商店街の大声コンテストですか、コノヤロー」

   *

 出席簿を教卓の上に放り投げ、銀八はくわえ煙草で言った。「うーし、じゃあロン毛ホームアローン始めんぞー」
「先生!」とすかさず、桂小太郎が挙手する。「正しくはロングホームルームです。それだと、長髪の人が長い間家に一人ぼっちでいるみたいです」
「うるせーな」銀八はイラっと眉を動かす。「おめーのロン毛がちらつくから間違ったんだよ。で、正しくはなに? ロン毛ホームレス?」
「それはただ単に髪の長いホームレスです」
「わーったよ。とにかくロングホーントレイン始めるぞ。今日の議題はぁ――」
 銀八は煙草の灰をこぽしながら言うと、黒板の方を向いた。チョークを手にし、徴妙に力の抜けた文字を書き始める。『修学旅行』と書いて、銀八は生徒に向き直った。
「に、ついてだ」
 なんで3年になって修学旅行? 普通2年の時じゃね? という読者諸兄のご指摘については、いいじゃん別によー、と小石を蹴る真似をすることでご勘弁いただくとして、ま、とにかく銀魂高校では、数か月後に修学旅行を控えているのである。
「先生!」とここで挙手したのが、丸眼鏡をかけた小柄な少女留学生の神楽だ。「なんで3年になって修学旅行アルか? 普通2年の時じゃね?」
「いいじゃん別によー」と銀八は小石を蹴る真似をする。
「…………」新八は一瞬考えたあと、つっこむ。「いや、今のやりとりいらないでしょ! なんで地の文でやった説明、もう一回リピートしたんですか」
「そういうオシャレな技だ」
「シャレてねーよ! なんだったら手抜きだと思われる危険性大だよ!」
「はい、ナイスつっこみ〜。じゃ、本題入んぞ」
「先生、僕だけ一足先に卒業してもいいですか?」という新八のコメントを無視し、銀八は続けた。
「今日は修学旅行の――」
 だが、言いかけた銀八にかぶせて発言した生徒がいた。
「え〜、ひょっとして今から部屋割りとか話し合っちゃったりするの〜? マジ盛り上がりそうなんだけど〜」
 変に間延びした声でそう言ったのは、パンパンに顔の肥えた、もとい顔だけじゃなく体も肥えた、金髪ガングロの女子生徒だ。名は公子だが、その名で呼ぶ者はクラスには1人もいない。
「盛り上がってんのはおめーの体だよ。先走んな、ハム子」銀八が舌打ちまじりに言う。
「なにそれ〜。マジムカつくんですけど〜。あとハム子じゃなくて公子なんですけど〜」 ハム子が銀八を睨んだあと、別の女子生徒が静かに立ち上がった。眼鏡でロングヘアの美人、猿飛あやめ――通称さっちゃんだ。
「先生! 部屋割りなら、私は断固として坂田先生と同室を希望します」そして頬を染めながら、こう続ける。
「先生、私は寝ろと言われれば玄関でも押入れでもどこででも寝るわ。自分はぬくぬくと布団で寝て、思う存分私を放置すればいいじゃない」
「先走んなっつってんだろーが」銀八は白髪頭をかきながら言う。「部屋割りの話でもお小遣いの話でも実家にいる家族に下ネタのダメ出しされた漫画家の話でもねーよ」
「じゃあ、なんについて話し合うんですか?」新八がきく。いい加減軌道修正してやらないと、ボケ合戦でホームルームが終わってしまう。
「行き先だよ」熟のこもらぬ口調で銀八は答えた。「今年の修学旅行の行き先は、俺たちが決めていいんだとよ」  担任の言葉に、マジでか! はんとかよ! と教室中が色めき立つ。
 新八も驚いていた。修学旅行の行き先を僕らが決める? すげーよ。すげー嬉しいけど
「なんでそんなことしていいんですか?」
 というのは聞いておくべきだと思った。
「だからそれはよー」言いながら、銀八はくわえ煙草の煙に目を細めた。「えーと、いつだったか校長室に呼ばれてよー」しかし、そこで言葉を切り、こう続ける。「つーか説明すんのかったりーから、回想シーンにまとめるわ。はい、ホワンホワンホワワ〜ン」
「いや、回想に入る音とかいいよ!」 (…この続きは本書にてどうぞ)

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