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劇場版 NARUTO―ナルト―
―疾風伝―
ゲキジョウバン ナルト

原作:岸本 斉史
著者:日下部 匡俊
脚本:武上 純希
■ISBNコード: 978-4-08-703187-4
■判型/総ページ数: 新書判ソフト/224ページ+口絵4ページ
■発売年月日: 2007年8月6日



 ナルトは、熱気の渦巻く洞窟の中を大きく飛び上がった。
 赤熱する溶岩が煮えたぎる広大な洞窟のその奥に、それは、いた。いびつな巨木のような暗い影が、恐ろしくゆっくりと左右に胴をくねらせている。
 と、本体のその動きからは想像もつかない速度で、龍の顎にも似た触手が、ナルトめがけてまっすぐに向かってきた。
 天井を蹴って方向を変え、かろうじてその攻撃をかわすと、邪悪なチャクラをまとった幾本もの触手は、ナルトの脇を通り抜け、その向こうにあった巨大な岩の塊をたやすく打ち砕いていた。
「ひょえーっ、あ、危ねえ……」
 肩越しにその光景を振り返ってから、ナルトはジャンプしたまま指先で十字の形に印を作った。
「多重影分身の術!」
 とたん、ぼ、ぼ、ぼんと煙を弾けさせながら、ナルトの周囲に十数人の影分身たちが出現した。そのナルトたちに向かって、さっきの触手がうねうねとのたうちながら凄まじい速度で伸びてくる。
 影分身たちのいくつかが触手に貫かれ、チャクラをまき散らしながら消滅した。
 かろうじて触手の攻撃をかわしたナルトは、バランスを崩して地面にたたきつけられていた。すり傷だらけの顔をきっと上げ、岩場の向こうに見え隠れする触手の主をにらみつけると、ナルトは素早く姿勢を立て直し、分身の生き残りたちとともに、岩場を蹴って飛び出した。
「オレは、死なねぇーッ!」
 その光景を見上げる少女の姿があった。長いまっすぐな髪の毛を振り乱したその娘は、恐怖に目を見開き、必死で叫んでいた。
「ダメ、ナルト!」
 だが、その声はナルトには届いていなかった。
 おぞましい圧力が眼前に迫るのを感じて、ナルトは握ったクナイをほとんど反射的に振り上げた。確かな手ごたえがあり、蒼黒い光をまとった触手のひとつがちぎれ飛んだ。
 ふうっと息をつく間もなく、ナルトの左右にいた影分身たちが吹き飛んでいた。かわしようのない本数の触手が、ナルトの真正面から襲いかかってきたのである。
 それでも、ナルトはあきらめなかった。
 触手にクナイを突き立て、あるいは蹴り飛ばし、チャクラの力で無理やり空中で方向を変え、ナルトはその絶望的な攻撃をかわし続けた。
 最後の一撃を反り返らせた背中ごしにかわし、ナルトはふたたび影分身を作り出すべく印を結んだ。その時だった。
 いままでの攻撃の背後に隠されていたのだろう、一本の触手が、空中を蛇行しながら電光の疾さでナルトの胸もとに追っていた。
「ああっ!」
 少女――紫苑の悲鳴にも似た声が響く。
 槍の穂先のように鋭利に伸びた触手は、一瞬のうちにナルトの胸もとを貫いていた。動きを止めたナルトに、さらに他の触手が殺到する。

   *

「……ち……くしょう……」
 ナルトの拳が力なく持ち上げられる。震える身体が、一瞬、赤いチャクラに覆われた。しゅうしゅうと煙を上げながら、ナルトの傷が癒えていくように見えた。
 だが、そこまでだった。ナルトのロから鮮血がほとばしる。不意にその身体から力が失われ、胸を貫いた触手にもたれかかったまま、二度と動かなくなった。
「ナルトォォ!」
 巨大な洞窟の中に、少女の悲鳴がうつろに響いた。


「では、もはやどうすることもできないのか」
 朝晩はともかく、昼間は暑さを感じるはずの時期だというのに、空はどんよりと曇り、じっとりと湿った空気は明らかな冷気を運んでいた。
 木ノ葉隠れの里、五代目火影綱手は、その執務室から遠くに望む墓地に目をやりながら、暗い声でつぶやいた。
 木ノ葉に悲報がもたらされたのは、ほんの一時間ほど前のことだった。
 ナルトの死。そして、魍魎を封じることのできるただひとりの巫女、紫苑が行方不明になったこと。さらに、カカシたち迎撃部隊がほぼ壊滅状態に陥ったということ。
 報告を受けた綱手は、ネジたちにねぎらいの言葉をかけ、ナルトの葬儀に送り出してから、人払いをしたままずっと部屋にこもっている。
「綱手さま!」
 ドアをたたくシズネの裏返った声が響いた。返事をしない綱手に業を煮やしたか、無理やりドアを押し開いて飛び込んできた彼女は、激しく肩を上下させながら叫んだ。
「お早く! 魍魎の軍勢が、すぐそこに追っています!」
 だが、綱手は大きくかぶりを振った。
「わたしは火影だ。里を捨てて逃げるわけにはいかない」
「しかし!」
「脱出は各上中忍を中心にすみやかに行え。シズネ、おまえは医療忍者を指揮して――」
「しかし、綱手さまがいなければ、木ノ葉は!」
 綱手は沈痛な表情で立ち上がり、窓の外に目を向けた。
「すべては運命なのか……」
 遠くに、幾本か細い煙の筋が上がっていた。それはみるみる大きさを増し、黒々とした火災の炎とともに澱んだ灰色の空へと吸い込まれていくのだった。 (…この続きは本書にてどうぞ)

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