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家庭教師ヒットマンREBORN!
隠し弾2 X-炎
カテキョーヒットマンリボーン

著者:天野 明
著者:子安 秀明
■ISBNコード: 978-4-08-703188-1
■判型/総ページ数: 新書コミックス判ソフト/256ページ+口絵4ページ
■発売年月日: 2008年2月4日
   mono・CHROME


 彼女は――涙を流していた。

 悲しくは、なかったように思う。
 ただ、機械的に、眼球の奥から液体がにじみ出ていく。
 ほおを流れ落ちていくそれの感覚は、不思議と彼女を楽にしてくれた。
 だから、彼女は涙を流していた。
 悲しいという感情は、もうどんなものか思い出せなかった。
 現実にかかわるすべてのことが、涙の中へとけていった。
 夢と現実のはざまは、だんだんとあいまいになっていった。
 すべてが混ざりあって、廻っていく。
 果てることなく、巡っていく。
 回転木馬――
 黄金の円舞曲――
 歯車の街――
 そして――輪廻。

「…凪――」
 未来……それとも過去――
「…凪――――――」
 優しくふれる……ふるえる……魂――
 やわらかに煙る霧のむこう
 遠くて近いところで彼女を待つ……約束――
「………―ム――――」
 …ゆれる…………ゆれる――――
 …それは……彼女に刈まれたもう一つの名前――――
「…僕の……かわいい――――」
「……かわいい…………クローム――――」



     1

 少年は、じっと、だまりこんでいた。
「…………………………」
 黒曜センターとよばれていた廃墟群の一角。『黒曜ヘルシーランド』と書かれた看板のかけられた建物の中。
 少年は、さびのういたベンチにすわって、ツンと目をそらしていた。
 ぴんぴんとはね上がった髪、凶暴そうな目、汚れとほつれの目立つ学生服。
 そして、口からは、だらりと長い舌をのぞかせている。
「…………………………」
 彼のそばには、同じく無言で立つ別の少年の姿があった。
 ワイルドな外見の少年とは対照的に、影のように静かな少年だった。
 眼鏡にニット帽のその少年は、疲れたように口をひらいた。
「理由」
 わけを聞かせろ。短い言葉で、自分の意思を伝える。
しかし、相手のほうは、かたくなに口を閉じたままだった。
 二人とも何も言わず、ただ時間だけが過ぎていく。
 五分……十分……――
「……んんんんんん……んぬなぁぁぁぁぁぁっ! らしゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 先に沈黙に耐えられなくなったのは、ワイルドな少年のはうだった。
「なんなんらよ、柿ピー! オレのことじ――――――っと見らってよぉ!」
「…………………」
「あんたはあれれすか! どっかの山のエラ――――――いお寺の仏像さんれすか!? 国宝級メガネれすか!!!」
「…………………」
「らって、しかたなかったんらよ。こいつらが店の前で『クフフフ』って言ってたから思わずさぁ」
 まばたきもしなかった眼鏡の少年が、ピクリと反応する。
「……何が、言ったって?」
「こ・い・つ・ら・が! ぴょん!!!」
 すわっていたベンチから勢いよく立ちあがり、少年は足もとを指さした。
 そこに山のようにつまれていたのは、緑と黄色のトロピカルな色をした果実で――
「……言わない」
「んあ?」
「パイナップルは、そんなことは言わない」
「言ったんらって! このナッポーらがまとめてクフフフって……」
 バシュッ!
「つ……痛ァァ――――――ッッッ!!」
 とつぜんの激痛に、少年は悲鳴をあげて飛びあがった。
 いつの間にか、眼鏡の少年の手には、ヨーヨーに似た『ヘッジホッグ』とよばれる暗殺武器がにぎられていた。
 そこから発射された針が、ワイルドな少年の尻につき刺さったのだ。
「なっ、なんれ、毒針ブッ刺してんらびょん!!!」
「いまのは……毒じゃない……」
「うっヘーっびょん! ドクだろうがなんだろうが、またオレにブッ刺しやがったら、てめータダじゃ……」
「毒のほうにしようか?」 (…この続きは本書にてどうぞ)

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