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小説
ロザリオとバンパイア
ロザリオトバンパイア

著者:志茂 文彦
イラスト:池田 晃久
■ISBNコード: 978-4-08-703191-1
■判型/総ページ数: 新書判ソフト/208ページ+口絵4ページ
■発売年月日: 2008年4月4日
  第一話 モカとつくね、衝撃のバトルタッグマッチ!

       一

 ここは妖怪の集う秘密の学校、私立陽海学園。
 さまざまな種類の妖怪たちが、人間と共存するために、人間の学生と同じような生活を送り、同じように学校で勉強し、人間世界の文化や文明を学んでいる。
 でもその中に、ふとしたはずみで入学してしまった本物の人間の少年がいた。
 少年の名は青野月音。
 この秘密を知っているのは、バンパイアの少女、赤夜萌香をはじめとする新聞部の部員ほか、ごくわずかな者たちだけだ。
 ほとんどの生徒や職員は、つくねを皆と同じ妖怪、しかも強い妖怪だと信じているのである。
 ――そういう事情なので、たまにはこんな出来事も起きる。


「青野―。おまえに会いたいって子が来てるぞー」
 ある日の放課後。HRが終わって帰ろうとしていたつくねに、クラスの男子が廊下から声をかけた。
「会いたい? オレに?」
 誰だろう、とつくねは首をかしげた。新聞部の誰かなら、遠慮しないでさっさと教室に入って来るはずだ。
 あ、ひょっとしたら紫ちゃんだろうか。紫ちゃんはまだ子どもだし、他のクラスにずかずかあがりこんで来るのには抵抗があるかもしれない。
 などと考えながら廊下に出てみると。
「青野月音さん、ですか……?」
 そこに立っていたのは初対面の女子だった。
 地味なデザインのブレザーを着て優等生メガネをかけ、黒くつややかな髪を腰まで伸ばしている。内気そうな、清楚な美少女だ。
「はあ。オレが青野月音ですけど」
 思わずこちらも丁寧な口調になる。ブレザーの少女は、ちょっと伏し目がちにつくねを見て、華奢な手で、そっと一通の手紙を差しだした。
「あの……これ、読んでください。おねがいしますっ」
 押しつけるようにつくねに手紙を渡し、次の瞬間くるりと背を向け、長い髪をなびかせてパタパタと走り去ってしまった。
 あっけにとられて、渡された手紙に目を落とすと、白い封筒の表書きには、ペン習字でも習ったみたいなきれいな字で、こうあった。

 青野月音様へ

 裏を見ると、封をしたシールもピンクのハートマーク。
「こ……これは、ラブレター?」
 どきん! と、つくねの心臓が大きく鳴った。


       二

 もちろん、つくねはモカのことが大好きである。
 新聞部には他に、黒乃胡夢というキュートで肉感的なサキュバスの女の子や、実年齢は小学生の、いたずら好きの天才魔法少女、仙童紫がいる。また、雪女の一族で表情に乏しいストーカー体質の白雪みぞれも、つくねと親しい。
 みんなとびきりかわいい上に、つくねに好意を寄せてくれている。これ以上、周りに女の子なんかいらねーだろ、と、たまにクラスの男子にやっかまれることもある。
 しかし、それはそれとして、思春期の少年にとってラブレターというのは特別な位置を占めているものなのだ。もらって嬉しくないわけがない。思わずときめいてしまうのも無理はないところだ。
 とはいえ、まだ相手の名前も知らない。また、自分のどこを好きになってくれたのかもわからない。
(純情でまじめそうな女の子だったし、断るにしても、ちゃんと返事をしてあげなくちゃ……)
 というわけで放課後。つくねは嬉しさと困惑がブレンドされた複雑な感情を抱えて、図書室に向かった。図書室の勉強机なら両側を板で仕切られているから、誰かに覗き見される心配がない。
 ちょっと緊張しつつ、手紙を開ける。ハートマークのシールを破ってしまわないよう、慎重に封筒を開く。
 ふわっ、と、甘い花の香りが立ちのぼった。たぶんコロンをふりかけているのだ。ああ、なんて繊細で女の子らしい心づかい。
 便箋も、かわいいキャラクターの透かしの入った、ピンクの愛らしいデザインだった。開いてみると、次の文章が目に入った。

 果たし状
 青野月音、貴様を殺す!

「………え?」
 目の錯覚か、と思った。
 パチクリとまはたきをして、あらためて文面に目を落とす。

 果たし状
 青野月音、貴様を殺す!
 私は一年一組、出席番号十八番、チェリー力石。そう、前にあなたにやっつけられた、プロレス研究部の、チョッパー力石の妹よ。
 あなたに負けて入院していたお兄ちゃんも、ようやく退院できることになったわ。そこであらためて、私とお兄ちゃんの二人で、あなたに再戦を挑みたいの。そう、決闘よ!
 一度は負けた男が、力と技に磨きをかけて、かつての敵にみごとなリベンジを果たす。フッ。まるでマンガみたいに王道な格闘ドラマのシチュエーションね。
 こちらが男女のコンビなんだから、あなたも女の子のパートナーを連れてきなさい。お兄ちゃんが負けた時にあなたのそばにいたっていう、髪の長い女の子がいいかもね。
 ということで、よろしくおねがいします。
                       チェリー力石
(…この続きは本書にてどうぞ)

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