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劇場版NARUTO-ナルト-
-疾風伝 絆-
ゲキジョウバン ナルト

原作・イラスト:岸本 斉史
著者:日下部 匡俊
脚本:武上 純希
■ISBNコード: 978-4-08-703195-9
■判型/総ページ数: 新書コミックス判ソフト/208ページ+口絵4ページ
■発売年月日: 2008年8月4日




 いずことも知れぬ深い山の奥。
 とうとうと流れ落ちる大滝をすかして、まばゆい陽光が差し込んでいる。
 ひんやりと湿った空気の漂う洞穴の奥、小枝を組んで作った扉のその向こうに、じっとうずくまって動かない人影があった。
 膝を抱えるようにして岩室の奥に座るその人影は、その両の眼を見開いて、ただ、光の差す方向をじっと見つめている。
 ふと、何のまえぶれも見せず、人影が立ち上がった。身に巻きつけた布をするりとはずし、ゆっくりとした足取りで戸口に向かって歩き出す。
 修業は最終段階に入っていた。いまや彼――うちはサスケは、自在に雷遁を操れる域に達しつつあった。もちろん、大蛇丸にはその術を一切見せていない。見せていなくとも、あの男なら、いまのサスケになにができるか、おおむね察しているだろう。
 遠からず、あの男とはこの身体をかけて戦うことになる。それは動かしようのない事実だった。もともと、あの男との関係は、それが前提のものだったからだ。大蛇丸がサスケにさまざまの術や知識をあたえたのも、最終的にはサスケの肉体をわがものとするためにほかならない。
 サスケがサスケであり続けるためには、大蛇丸を倒す以外に道はないのだ。
 枝を組んだ扉を押し開き、水煙の舞い散る洞穴へ進み出していく。むき出しの上半身に水気を含んだ冷気がまといつく中、それを心地よく感じながら、サスケは前かがみになって落ちてくる水の奔流を頭に浴びた。
 大自然の生み出す息吹をその身に感じながら、同時に、サスケは強くチャクラが身体の奥から湧き上がるのを感じていた。
 気息を整え、腰を落とす。印を結ぶ必要もない。練り上げられたチャクラは、サスケの意思の力だけで性質を雷のそれへと変え、電光を放ちながら左の掌からほとばしり出た。
 無数の鳥がさえずるかのような音をたてて、サスケの放った電光が巨大な瀑布を覆っていく。
 突然、雷鳴にも似た轟音とともに、閃光を放って滝が爆発した。巨大な滝はその一瞬姿を消し、あたりは吹き飛んだ水蒸気の作り出した濃霧に広く覆われていく。
 やがて吹き始めた風に水蒸気が吹き払われ、なにごともなかったかのように滝がふたたびその流れを取りもどした頃、身支度を終えたサスケは、滝の上にある断崖に立って、静かなまなざしをはるか遠くへと向けていた。
 力は得た。復讐の時は近い。だが、まだ完全なる自由を得たわけではない。
 サスケは反射的に左の首筋に触れていた。呪印……大蛇丸のつけた恪印だ。大いなる力と引き換えに、サスケを大蛇丸のもとに縛りつける鉄の鎖。
「フン……」
 不快げに鼻にしわを寄せ、小さく鼻を鳴らすと、サスケはその場から姿を消していた。




急襲! 空の忍者の章


     1

 火の国にほど近い海上を、白波をたてて進む艦隊があった。
 その大半は見慣れない形をしていた。一般に空母と呼ばれるその艦は、円筒状の船体をならべた上に、複雑な形状の角張った塔が乗った形をしている。
 それらの空母から、あわただしく叫び交わす声が聞こえてきた。
「出撃準備!」
「乗り手は全員搭乗せよ!」
 甲板を何人もの人間が駆けていく音が響き、それをかき消すような重い機械音がうなりを上げている。と、塔の上部に、なにか細長い板を背負った人影がせり上がってくるのが見えた。それが、目の前にある手すりに両手をかけ、身を低くする。
 ガシャンと音をたてて床が前方に向かって滑り始め、手すりにつかまっていた人影を勢いよく前方に放り出した。とたん、人影が背負っていた板が左右に展開し、翼を形づくる。同時にぼんやりと光を放つ帯を曳いて、翼を背負った人影は飛翔を開始した。その姿は、下から見上げると、子供がよく揚げている凧のようにも思われた。
 さらに、おなじように飛び立った人影が、艦隊の上で編隊を組みながら大きく旋回する。
 気がつくと、翼を背負った人影は空を覆わんばかりの数になっていた。ようやく、それ以上飛び立つ影がなくなったと思われたところで、今度は空母にそびえる塔の人間の顔をかたどった基部のあたりが大きく左右に割れ、中から大きな機体がせり出してくる。
 それが、激しい電光とともに、凄まじい勢いで打ち出された。上空を舞う人間の背負った翼とおなじように、その機体も空中で巨大な翼を展開し、その端から光をたなびかせ、ゆっくり加速し始める。
 大型の機体を中心に、いくつもの凧の編隊がさらに大規模な編隊を形成していく。やがて彼らは旋回をやめ、内陸をめざして飛行を開始した。 (…この続きは本書にてどうぞ)

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