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岳飛伝 七
懸軍の章
北方謙三

   炳杳の火

      一

 岳州にむかっていた。
 褚律の歩き方は、人が走るのより速い。梁山泊に来てから身につけたものだが、躰を鍛えてさえあれば、極端に難しいというものではなかった。
 周囲の気配には、注意を払っていた。人がいるところでは、歩調を落とす。
 岳州陳家村を訪れ、柴健に会ってきた者たちから、村の微妙な変化を伝えられていた。気にするほどではないという判断を一応は下したが、ひっかかるものはあった。
 褚律は、岳飛と姚平の旅を見守って、大理との国境まで行った。できるかぎり、手は出すなと、燕青からは言われていた。しかし、二人が襲撃を受け、危ないと思った時、介入していた。姚平を担いだ岳飛を逃がしたが、顔は見られた。
 岳飛が病に倒れたりして、大理までは思わぬ日にちがかかった。それに、岳飛は悠然としていて、急ぐようではなかったのだ。
 二人を襲ったのが何者なのか、調べることは難しかった。撤収する時、仲間の屍体も担いでいったのだ。
 ただ、臭うものはあった。集団での動きの連携はとれていた。しかし、争闘を主とする者たちではない。潜入や撹乱などを任務とする部隊だと思えた。
 その臭いは、なぜか褚律に青蓮寺を思い起こさせた。青蓮寺については、直接闘ったことはあまりない。だから、どういうものだというのも、頭の中で決まってしまっていた。
 思わず青蓮寺の臭いを嗅いだのは、燕青や侯真や羅辰の言葉が蘇ったからだろう。
 臨安府の青蓮寺がどうなっているかは、じっくりと見ていた。見れば見るほど、掴み難いものは出てきたが、梁山泊が警戒しなければならないものはない、と褚律は感じていた。それは、羅辰の見方も同じだった。
 青蓮寺の実際の動きが活発になったのは、岳飛が放免される時からだった。
 秦檜の動きは、放免してのち、軍を動員して捕えようというものだった。秦檜自身の意思とは思えない。岳飛を捕えるために敷いた態勢は、戦を知っている者ではなく、頭で考えたとしか思えない硬直したものだった。
 岳飛は、楽々と包囲を破り、南へむかった。
 その移動の平然としたさまは、追手の眼を見事にくらましていたし、褚律の心の底も、どこかで揺り動かした。
 岳飛が病に倒れた時、褚律は右往左往している姚平をただ眺めていた。弓疵(破傷風)らしく、助かるのは難しいだろう、と思った。惜しいという気はしたが、病で潰えればそれだけのものだ、とも思った。
 弓疵の発作を、数日耐えていた人間を、褚律は知らない。大抵は、発作が数度で、絶息して死ぬ。二日保つ者は、稀だった。軽く済む人間が生き延びるが、それは発作が三度か四度程度なのだ。
 岳飛は、数十度の発作に襲われ、それでも生き延びて、また平然と旅を続けていた。
 大理に入ったのを見届けてから、褚律は気持にひっかかっていた、陳家村へむかったのだった。
 その途中で、羅辰の部下が、別の情報を届けてきた。南宋の三ヵ所の土地で、銀の鉱脈が発見され、掘られはじめた。昼夜兼行で、臨安府の手が入った時は、掘り尽されていたという。
 つまり銀山の存在を臨安府は掴んでおらず、どこかが密かに掘り、運び出せるようにしていた、と考えるのがいいだろう、という羅辰の判断もあった。
 誰がそれをやっていたか、考えて出てくる名は多くない。青蓮寺と考えるべきだろう。まだ南宋の混乱期、李富が銀鉱を探させた。そして、見つけたものを秘匿していた。
 それぐらいのことは、やる男だろう。
 銀山の規模がどれほどのものかはわからないが、青蓮寺が、臨安府から独立した力を持ったと、頭には入れておいた方がいい。
 燕青は、京兆府(長安)のあたりにいて、そこで南宋と金国の講和交渉を見守っていた。
 少し日数はかかったが、講和は成った。
 ともに、国内の動きは活発になったようだ。梁山泊がそれにどう対応するのか、その指示は聚義庁から届いていない。届くまで、自分の判断で動くというのが、褚律のやり方になっていた。
「燕青殿」
 岳州が近づいたころ、前方を歩いている人間の背に、褚律は声をかけた。
「見破られたのか。私も未熟だ」
 燕青は、旅芸人の恰好を変えていない。笛吹きの老人である。
「陳家村へ、行かれるつもりですか?」
「おまえの報告だけでなく、あそこへ行く理由ができた」
「わかりました。俺が先行しても構いませんか」
 返事がないのは、了解である。唇を動かさずに喋っても、なにか気配は出る。必要のない時は、無言が一番なのだ。
 褚律は、燕青の一行を追い越した。
 岳州の城郭を横眼で見て、通り過ぎた。陳家村までの、東へ四十里(約二十キロ)の道から、褚律ははずれた。さりげなく街道を見張っている人間がいる、と感じたからだ。
 その感じは、どこかで知っているものだ、と思った。間道の小径を駈けながら、それが自分自身がいつも出している感じだ、と褚律は気づいた。
 自分の同類が、この近辺にいる。陳家村へ行く理由ができた、という燕青の言葉を思い出した。
 小径は、いくつにも分かれている。木立の中で、見通しもない。褚律は、方向だけを失わないようにして歩いた。
 やがて、見知った湖の畔に出た。
 褚律は、旅の修繕屋の衣装を整え直した。
「おい、どこから来た?」
 陳家村までまだ二里はあるという場所で、褚律は声をかけられた。
「江陵府の、小さな村からです」
 声をかけてきたのは、小屋に座っている老人だった。その老人が決して老いてはいないことを、爪の色で褚律は見てとった。
「ほう、江陵府から、街道を?」
「いや、川を。湖に魚を獲りに行くという舟を見つけたので、乗せて貰いました」
 川には、それほどの見張りはいない。そして、魚を獲る舟は、しばしば見かけた。だから、とっさに川から来たことにした。
「陳家村で、修繕の商売かね?」
「知ってる人がいます。保正(名主)の陳麗華ですよ。鍛冶屋はいないし、仕事はくれると期待しているのです」
 男は、座ったまま、鉈で薪を割りはじめた。
「どんな魚が、獲れていた?」
「わかりませんねえ。漁をする前に、降ろして貰いましたから」
「自分で食うのか?」
「それも、訊かなかったなあ。もしかすると、干物にして自分の家で食べるのかもしれませんね」
 一瞬だが、男の躰から剥き出しになったものが伝わってきた。褚律は、じっとしていた。薪が飛んできた。それを、褚律はしっかりと眼で捉えていた。寸前でちょっと顔を伏せ、額でそれを受けた。昏倒する自分も、はっきり見えていた。視界に、空だけがあった。
「すまん、薪が飛んでしまった」
 男が、腰をあげる気配があった。
「血が、出ている。村へ行って、手当てをして貰え」
 褚律は、ただ唸り声をあげた。上体を抱き起こされた。褚律は眼を閉じ、大きく二度、息をついた。それから眼を開き、額の傷に指さきで触れた。瘤ができ、血も出ていた。
「なにか、飛んできた。当たった」
「すまんな。割った拍子に、薪が飛んじまった。大事はないと思うが、悪いことをした」
 薪を、飛ばした。この男の持っている技で、石でも飛ばせるだろう。
「立てるか?」
「大丈夫です。だけど、ずきずきしているなあ」
「村へ行って、井戸水で冷やせ」
 頷き、褚律は村にむかって歩いていった。
 試された。村に入ってくる人間に対して、警戒心を強く持っている。
 村の入口に、男が二人いた。
「傷を、冷やしたいのです」
 男たちは無言で、しかし褚律を止めようとはしなかった。
 広場へ行き、自分で井戸水を汲んで、手拭いを濡らした。座りこんで、傷に当てる。そうしながら、村の様子を窺った。
「褚律さんではないか?」
 声をかけてきたのは、陳家の執事だった。
「仕事を貰えると思って来たのに、おかしな物を貰ってしまった。なんと、薪が飛んできたのだよ」
 男が笑った。村は、短い間に様子が変っていた。村の営みをしていないと感じられる人間が、広場にかなりいるのだ。柴健が部下に伝えた通りだった。
 ただ、なにが起きているかは、わからない。ここで暮らしているはずの柴健にも、わかっていないだろう。
「陳麗華さんは、婿でも貰ったかね?」
「いや、元の通りだよ。このところ、ますますわがままになっちまってるが」
「俺の仕事、ありそうかね?」
「さあな。広場に店を出してみるんだね」
 柴健の話題は、出さなかった。この執事は、柴健の腕を見事に斬り落とした。落ちかかっていたとはいえ、人の腕をたやすく斬ることなど、保正の執事にできることではない、という気がする。
 褚律は、額の手拭いを見つめ、血が止まっていることを確かめた。
「眼から、火花が出たよ、執事さん」
「ひどい瘤だよ。まあ、それだけで済んでよかった」
「あのあたりに、幟を立てたいんだが?」
 わずかな銭だが、褚律は執事に握らせた。どこの村でも、店を出す時はそうする。無表情に、執事は頷いた。
 褚律が幟を立てると、すぐに鎌の研ぎが入った。砥石は、二種類しか持っていない。硬いものを切ったらしく、二カ所に刃こぼれがあった。
「この刃こぼれを消すとなると、いくらか小さくなります」
「切れるだけでいいさ。冬の秣を刈っておかなきゃならない」
 頷きながら、この村に馬が何頭いたか、褚律は考えた。この間、一頭はいた。ほかにいるかどうか。秣を刈っておくなら、相当の数の馬がいると思えた。
「二刻(一時間)、いただきますよ」
「後で、取りに来る」
 井戸から水を汲んできて、褚律はまず砥石を濡らした。
 二刻ほどで、きれいに研ぎあがった。
「あたしのところに、挨拶に来るのが筋じゃない、褚律さん」
 顔をあげると、陳麗華が立っていた。
「執事さんに、御挨拶はしたよ。仕事があれば、ここに逗留するつもりだったから、ゆっくり話をしに行こうと思っていた」
「どこに泊る気よ。いまこの村に、空いている家はないわよ。あたしのところに泊った方がいいわね」
「前は、空いている家がいくつかあった、という気がしたが」
「十軒も新しい小屋を建てた。それでも足りないぐらい、ここは人が増えたの」
「村の人が増えるのは、赤ん坊が生まれた時ではないのかい?」
「近くに、鉱山があるの。そこで働いている人たちが、百人以上いるわ」
 鉱山という気配はない。鉱夫たちは、坑のそばに宿舎を建てるのが普通だった。そして鉱夫目当てに、いろいろな人間たちが集まってくる。
 いまある顕著な変化は、荷車が多いことだ。ちょっと見ただけでは、草や俵などを積んでいるが、底になにがあるのかはわからない。
 鉄瓶の穴をひとつ塞ぎ、錠前を直した。
 それで夕刻になったので、保正の屋敷に行った。
 庭に、柴健が立っている。褚律と眼を合わせると、俯いた。村の人間が三人、棒を教えられているようだ。
「褚律さん、こっち」
 陳麗華が、玄関の方から声をかけてきた。泊めて貰うとしても、裏口から入るのが当たり前だった。
「褚律さん、お客様なんだから」
 仕方なしに、褚律は玄関から家に入った。
「相変らず、旅の修繕屋さんをしているのね。でも、なかなかここへは来なかった」
 陳麗華は、以前にはない色香を漂わせているような気がした。二十四歳になるはずだと、褚律は頭の中で数えた。
「この村、ちょっと変ったでしょう?」
 居間の卓の前に腰かけ、陳麗華が言う。
「ふむ、確かに」
「いいように、村が使われているのよ」
「使うって、誰が?」
「臨安府から来た人たちよ」
「ふうん」
 それ以上、褚律は話を掘り下げるのをやめた。臨安府なら秦檜と考えるのが妥当だが、いまは青蓮寺のことも考えなければならない。秦檜と青蓮寺が対立していることは、およそ予測ができた。
「俺の仕事、ありそうだ。幟を立てたら、すぐに客が来た。そして、途切れることがなかったよ」
「明日は、もっと忙しくなるかもしれない。もし雇うと言われたら?」
「断るね。気ままに仕事ができるから、店を構えずに、旅をしているんだよ。どんなに忙しくても、一日に五人の客でやめる」
「ほんとに気ままなのね、褚律さん」
「働くのだけが、人生じゃないだろう」
「さっき、柴健殿に会ったでしょう」
「梁山泊に帰ったのかと思っていた」
「褚律さんが来るの、ずっと待ってた。なぜかわからないけど、このごろとても気にしているわ」
 三年になる。このまま、はらわたが腐って死ぬと、柴健は思っているのだろう。死ぬかどうかは別として、ひどく苦しむ。その予兆が出ているのかもしれない。
「呼ぶ?」
「この屋敷にいるんだろうから、夜、じっくりと喋ってみるよ」
 屋敷の中も、どこか変っていた。執事の態度が高圧的になり、怒鳴っている声が聞えたりする。いるかいないか、わからないような執事だったはずだ。
「今日の稼ぎで、ちょっとばかり酒を買い、躰を洗ったら、柴健さんと飲むことにしようかな。あの人、ずっとこの村を守ってきたのか?」
「いま来ている人たちとは、関係ないわ。それに賊徒に襲われることもなかったし」
 柴健は、大人しく褚律が来るのを待っていたようだった。もともと、臆病な男だ。
 夜がいくらか更けてから、褚律は柴健の部屋へ行った。寝台の柴健が、起きあがった。
「間に合ったな、おい」
「俺のはらわたは、腐りかけていないか。時々、ひどく痛むことがある」
「血の道が、狭くなっている。それがこたえはじめた、というだけのことだ。あとひと月で、腐りはじめる。ふた月は苦しむな。ひどい苦しみで、生きていたことを後悔する」
「あんたの言う通りに、俺はやってきた」
「話をする時は、まだある。血の道を通すのは、それからだ」
「ほんとうに、通せるのか?」
「通せる」
 部屋には、蝋燭が一本あるきりだった。炎は、静止しているように見える。
「この村は、急に変ったな」
「ああ」
「おまえの眼には、どんなふうに映っている?」
「どうということはない。この村に銀が運びこまれ、そしてどこかへ持ち去られている。それだけのことだよ」
「銀と言ったのか?」
「俺は、見た。荷車の荷台の底に、銀の小袋が敷きつめられている。その上に、穀物の入った俵などを載せているのだ」
「おまえは、それを探ったのか?」
「まさか。あの連中は、軍みたいなものだ。そんなに怖いことはできないよ。村から街道へ出る道の轍が、少しずつ深くなった。重たい荷車など、あまり通らないところだからだ。一番深い轍で、荷車が傾き、そして倒れた。小袋が、撒き散らされたよ。銀を直に見たわけではないが、あれが銀でなくてなんなのだ」
「そうか。おまえ、いま軍みたいなものだ、と言ったな。なぜ、そう思った?」
「動きを見ていると、やつらには指揮官がいるのがわかる。荷車を曳くのと押すのの両方にだ。そして、全体の指揮官もいる」
「これまでに、何台ぐらいを運び出した?」
「十五、六台だと思う。銀を載せている時だけ、やつらの動きが違う。なにか、きびきびとしている。そして、指揮官は緊張しているな」
「どこの軍だ?」
「わからない。南宋軍ではないだろう。南宋軍なら、わざわざ農民を偽装する必要はないからな。農耕をやるわけでもない連中だ」
「陳家村全体で、それを受け入れているのか?」
「それも、よくわからない。穀物を俵に詰めたりするのは、村人がやっていて、指揮をしているのは執事さ。あの執事は、おかしい。連中が来てから、突然変った」
「陳麗華は?」
「執事と、二度、言い争いをした。どこからか、中年の男がやってきて、ひと晩喋ったようだ。それから、連中になにか言うのをやめてしまった」
「おまえは?」
 柴健が、一度、強く眼を閉じた。
「俺は、その辺で飼われている犬と、同じだよ。陳麗華殿は、そんなことはせず、ちゃんと扱ってくれるが、連中は犬を追うように、俺を追い払う。執事まで、そうなった」
「そうか、犬扱いか」
「連中は知らない者ばかりだが、執事にそんなことをされるのは、我慢できん」
「村人に、棒を教えていたな」
「俺には、片腕がない。だから、自分で棒を執って教えることはできない。それが幸いしている。口だけでいいのだからな。しかし、熱心にやる村人は、あまりいない。陳麗華殿に言われて、仕方なくさ」
「おまえ、死んだ方がいいのではないか?」
「そういう気もする。しかし、苦しむのはいやなのだ」
 柴健ならそうだろう、と褚律は思った。小心で臆病で、しかし生への執着が強いところもある。苦しみや痛みは恐怖で、それを想像すると、死が色彩豊かに感じられる時があるのかもしれない。
「いろいろ怖い思いをしただろうが、そろそろ血の通りをよくしてやるかな」
「頼む」
 褚律は左手を柴健の肩にかけ、右手の人差し指と中指を、柴健の左の肋の下に突き刺した。柴健は首をのけぞらせ、気を失った。それでも褚律はさらに深く指を入れた。手が、半分肉の中に埋もれたようになった。指先が、なにかに触れた。それは、血の塊のようなものだが、反撥のない柔らかさがあった。塊が、砕けた。
 指を抜いた。柴健は、鼾をかいている。頭を、卓の方へ持ってきた。うつぶせて眠っているような姿勢だ。
 褚律は、蝋燭を吹き消し、寝所としてあてがわれた部屋に入った。
 翌朝、幟を出すとすぐに、剣の研ぎを頼まれた。それは時を食い、およそ六刻でできあがった。貰ったのは、銀の小粒ひとつだった。ここに入ってきている者たちの、指揮官である。
 剣を研ぎに出すことを、躊躇はしていない。褚律を相手にしていないか、もうすべてを構わなくなっているかだろう。
 柴健が外に出てきたのは、午を過ぎてからだった。片脚は引き摺っているが、憑きものが落ちたような表情だった。
「ここは、青蓮寺の末端の村だ」
 声がした。鍬を持った農夫が立っている。燕青だった。
「いま、姿を現わしたというところだが、以前から数名が入りこんでいる。どれか、ひとりぐらいの見当はつかぬか?」
 褚律は鍬の柄を抜き、炭火の中に突っこんだ。
「保正の家の、執事がそうです」
「わかった。あとはこちらでやる。おまえはこのまま、流れの中にいて、見るべきものを見ろ」
 燕青が、どうやって村に入ってきたのか、わからなかった。大胆不敵としか言えないが、村人の中に混じっても、これだけ他所者が入っている状態では、目立たないのかもしれない。
 いつの問にか燕青はいなくなり、褚律は残された鍬を見つめた。
 広場に出てきた執事が、数人の村人になにか言っている。頭ごなしだということは、遠くからでもわかった。それを、井戸の脇に立って、陳麗華がじっと見つめている。

 
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