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それでも裁判員、やりますか?
裁判員制度というファシズム
ソレデモサイバンイン ヤリマスカ

著者:井上 薫
■ISBNコード: 978-4-08-780520-8
■判型/総ページ数: B6判ソフト/224ページ
■発売年月日: 2009年3月26日
国民に「義務」を強いる裁判員制度は憲法違反

裁判所という「戦場」に狩り出される

 2008年11月末から12月の上旬にかけ、あなたの自宅郵便ポストに「最高裁判所」と表に記載された封書が届きませんでしたか?
 これこそ、あなた方、一般国民を「予備兵」として戦場に狩り出すための「赤紙(召集令状)」にほかならないのです。
 「何をバカなこと言ってるんだ。太平洋戦争は60年以上も前に終わっている。今は徴兵制の時代じゃないんだから、そんなものが届くはずないじゃないか!」
 おそらく、多くの国民はそう思うでしょう。
 でも、それは違うのです。その赤紙は国民を「裁判員」として法廷に狩り出すためのものです。
 最高裁から届けられた封書は、あなたが裁判員の候補者に選ばれたことを示します。
 そして、いずれ裁判所からの「呼出状」を受けて裁判所に“出頭”しなければなりません。
 裁判員の候補者になることが、なぜ赤紙を送られたことになるのか。それは、裁判員制度の下では、裁判員になることは国民の「義務」とされ、裁判所からの呼出状は徴兵制の時代の赤紙とまったく同じような強制力を持つからです。
 09年5月21日に始まる裁判員制度は「裁判の進め方やその内容に国民の視点、感覚を反映する」目的で導入された、日本の司法改革制度の目玉に位置づけられている制度です。
 しかし、この裁判員制度は日本が戦後培ってきた自由主義制度を脅かすものにほかならないのです。
 まず、国民は裁判員を辞退することはほとんどできません。
 「裁判といっても、私は法律の素人。人を裁くなんてできはしない。裁判員になんかなりたくない。日本は自由主義の国なんだから、辞退できるはずだ」
 と懇願してもダメです。裁判員になることは国民の義務ですから、いったん裁判員候補者に選ばれたら最後、よほどの理由がない限り辞退は許されません。
 好むと好まざるとにかかわらず、法律のプロである職業裁判官と一緒に、殺人などの凶悪犯罪を犯したとされる刑事事件の被告人と向き合って、場合によっては死刑の判決を下さなければいけないのです。
 日本国憲法では国民の義務として、「教育を受けさせる義務」「勤労の義務」「納税の義務」の三つを規定しています。
 逆にいえば、この三つを果たしていれば日本国民の義務を果たしていることになり、普通の社会生活を送ることが保障されているのです。
 たとえば、負債を抱えていて、それを返済しなければならない責任を負っている場合などを除けば、日本は、人から何か頼まれごとをしても国民自身が判断して断ることができる自由主義の社会です。
 国民の義務を増やすための憲法改正も行われていないのですから、いくら「裁判員が義務」だといわれても、本来は断れるはず。なのに、それが許されない。まるで憲法が改正されて、新たな義務が規定されたのに等しいことが今、裁判の世界で現実に行われようとしています。
 そもそも裁判員制度はなぜ導入されたのでしょうか? 我々国民も事情をよく知らされない間に、一部の人たちによって制度が作られ、関連法案が国会で成立してしまいました。実際、各種の世論調査でも、国民の多くが裁判員制度に消極的であることがわかります。
 このように、国民が「NO」を突きつけている制度を国はなぜ強行するのか? もはや、日本は民主主義国家ではなく、国民の自由や人権が極度に抑圧されるファシズム(全体主義)の国になってしまったかのようです。
 具体的にいいますと、裁判員制度の下では国民の人権は踏みにじられ、報道機関は自主規制の名の下に報道の自由を失っていきます。日本は戦後60年以上を経て、「かつて歩んだ道」を再び歩もうとしています。その愚を犯さないためにも、裁判員制度を即刻葬り去らなければならないのです。なぜ、裁判員制度が日本をファシズムの道に走らせることになるのか。これから、読者のみなさんと考えていきましょう。
 その前に、まず、裁判員制度とはいったいどういうものなのか、簡単に説明したいと思います。


凶悪犯罪の被告人を国民が裁く

 裁判員制度は、国民が刑事事件の一審裁判に参加し、被告人が有罪か無罪か(事実の認定)、有罪の場合はどのような刑にするのか(量刑)、などを職業裁判官と一緒に決めるものです。
 ひとつの事件について裁判官3人と裁判員6人が裁判を行います。
 裁判員制度の対象になる裁判は「殺人」「強盗致死傷」「傷害致死」「危険運転致死」「放火」「身代金目的誘拐」など、いわゆる凶悪犯罪ばかりです。
 裁判員制度の対象となる事件は2643件(07年)で、これは全国の地方裁判所で扱った刑事事件の事件数9万7826件の2.7%に相当します。2643件のうち最も多いのは強盗致傷で695件、次に多いのが殺人で556件です。
 殺人事件も裁判員制度の対象になりますから、被告人に死刑判決を下す可能性のある裁判に、法律知識のない一般国民が関与することになります。
 まず、裁判員に選任される手続きは次のような流れになります。
 毎年、有権者名簿の中から翌年の裁判員候補者となる人をくじで無作為に選び、裁判所ごとに裁判員候補者名簿を作成。名簿に記載された人に対してはその旨の通知書と調査票が郵送されます。これが冒頭に記した赤紙(封書)のことです。つまり、選挙権を持つ20歳以上の国民はすべて裁判員になる可能性があるのです。(…この続きは本書にてどうぞ)

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