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書誌情報

小説/戯曲

さいはての家

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著者

著者:彩瀬 まる

あらすじ・概要

「この世から逃げたくて仕方がない。
それと同じくらい、この世に触れたくて仕方がない」(本文より)

駆け落ち、逃亡、雲隠れ。
行き詰まった人々が、ひととき住み着く「家」を巡る連作短編集。

家族を捨てて逃げてきた不倫カップル――「はねつき」
逃亡中のヒットマンと、事情を知らない元同級生――「ゆすらうめ」
新興宗教の元教祖だった老齢の婦人――「ひかり」
親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹――「ままごと」
子育てに戸惑い、仕事を言い訳に家から逃げた男――「かざあな」


■『さいはての家』の刊行に寄せて、著者メッセージ■

 それから、町で彼(もしくは彼女)の姿を見た者はいない――。
 こんな一文を最後にいなくなる脇役の人、いますよね。登場人物が多いドラマティックな長編の中盤、なんらかの騒動の後にほんのり印象的なセリフを残して物語から退場する、あの人たちです。
 子供の頃から、彼らが物語から退場するたび「どこに行ったんだろう」と気になっていました。居づらくなって、罪を犯して、もしくはなにかに反発して、それまで所属していた場所を捨て、他の土地へ向かう人たち。物語の作者が退場していく彼らではなく、その場に残る他の誰かを主人公に据えているということは、きっと彼らのその後は大してドラマチックでも、面白いわけでもないのだろう……と自分を納得させていた時期もあったのですが、本当だろうか。
 ここではない場所へ向かった彼らは、もしかしたらとても個人的な冒険を経て、他の誰も見たことがない、静かで自由な場所に辿り着いたのかもしれない。そんな予感から、五つの物語が生まれました。
 それぞれのさいはてを、見届けてください。


【著者略歴】
彩瀬まる(あやせ・まる)
1986年千葉県生まれ。大学卒業後、小売会社勤務を経て、2010年「花に眩む」で第9回「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。17年、『くちなし』で第158回直木賞候補となる。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『やがて海へと届く』『朝が来るまでそばにいる』『眠れない夜は体を脱いで』『森があふれる』など。